report 銘醸ワインの夕べが開催されました
1647年に創業され、11代に渡って継承し続けているスペイン・ナバーラ地方の名門”ボデガス・チビテ”より、CEO兼醸造所責任者でいらっしゃるフェルナンド・チビテ・ロペス氏をお迎えし、銘醸ワインの夕べを開催いたしました。
「輸出が開始されてから125年を記念して・・・」と名付けられたColección 125 シリーズより、ナバーラが誇るロゼのRosado 2006、またフェルナンド氏がこの銘醸ワインの夕べの為に、特別に直接蔵出しでお持ちくださったBlanco 1996、フルーティーなアロマが際立つデザートワインのVendimia Tardia 2007の3種。
そしてビノ・デ・パゴ(単一畑高級ワイン)のスペインで最高ランクの格付けを持つArínzanoより2002年、2001年、2000年の異なるヴィンテージの赤ワインを飲み比べ、それぞれの風味を味わっていただきました。
「どのヴィンテージが美味しいか?」と、参会されていたワインジャーナリストの有坂芙美子さん。フェルナンド氏も他のお客様とともに好みのヴィンテージを示すなど、気取りのない意見交換は大変面白いディスカッションとなりました。
ワインの造り手と最高のワインを味わい、語らう・・・、そして、そこに色づけされた小笠原伯爵邸特別ディナーとの究極の饗宴は、参会された皆様にスペインの新たな魅力をお伝えできた貴重なひと時となりました。
************************************
ワインジャーナリストの有坂芙美子様より
コメントを頂戴いたしました。ぜひご覧ください。
************************************
日時: 2011年2月21日(月) 19:00開会
会費: お一人様 ¥18,000(料理・ワイン・税・サービス料込)
– VINOS –
Colección 125 Rosado 2006
Garnacha.Syrah.Cabernet Sauvignon.Merlot.Pinot Noir
Colección 125 Blanco 1996
Chardonnay
Arínzano 2002
Tempranillo.Merlot.Cabernet Sauvignon
Arínzano 2001
Tempranillo.Merlot.Cabernet Sauvignon
Arínzano 2000
Tempranillo.Merlot.Cabernet Sauvignon
Colección 125 Vendimia Tardía 2007
Muscat à petits grains
– MENÚ –
Guiso de Sepia, Hongos y Polvo de Ajos de la Mancha
墨烏賊のソフリトとポテトのエスプーマ
Bombón de Queso Arzua Ulloa, Pimientos Escalibados y Pasas
パプリカのエスカリバーダ、アルスア・ウジョアチーズ、干し葡萄のボンボン
Milhojas de Pisto de Calabacínes y Caviar Ossetra
薄焼パイで挟んだオシェトラキャビアとズッキーニのピスト
Consomé de Ajos Quemados, Centollo y Hierbas Aromáticas
にんにくのコンソメ たらば蟹とハーブの香り パプリカのエスカリバーダを添えて
La Coca de Bogavante, Tomates Confitados y Salsa de Algarrobo
オマール海老のコカ アルガロボソース添え
Crema de Foie Gras, Vieira a la Plancha,
Aceite de Oliva Negra y Nashi Caramelizada
帆立貝とフォアグラのクレマ 梨のキャラメリゼとブラックオリーブオイル
El Filet de Rape Sobre Habas Cocidas en un Caldo de Colágeno
y Áloe Vera, Galleta de Huevas de Mújol y Tomate Seco
鮟鱇と鮟肝 からすみのガレット コラーゲンたっぷりのソースとともに
Lomo de Buey Japonés, Cebollas Perlas Confitadas,
Cremoso de Tubérculos y Salsa de Trufa
特選牛ロース肉 パールオニオンのコンフィと里芋のクレモソ添え トリュフソース
Tarta de Ruibarbo, Sorbete de Frambuesa y Lichis
ルバーブのタルトとフランボワーズとライチのソルベ
◆◇◆ワインジャーナリストの有坂芙美子様よりコメントを頂戴いたしました◆◇◆
スペイン・ナバラ州で、最古のワイン醸造所である「ボデガ・チビテ」のオーナー・フェルナンド・チビテ氏の来日を記念して、2月21日、レストラン小笠原伯爵邸で、銘醸ワインの夕べが開かれた。
チビテ創業の1647年、江戸時代の日本は正保4年、ポルトガル船が九州に出現した年である。
ナバラは、スペインでもっとも知名度の高いワイン産地、リオハの北東部、ピレネー山麓に葡萄畑が展開する。19世紀末、ボルドーの葡萄畑が、フィロキセラ(葡萄根アブラムシ)で全壊したとき、リオハとナバラの葡萄によって、ボルドーのワイン産業が助けられた、という歴史がある。
伝統的に、主要品種がガルナッチャだったので、日常ワインはロサード(ロゼ)ワインだった。スペインで20世紀後半、ワインの近代化が始まると同時に、ナバラでもワインの革新時代を迎えた。葡萄品種は、テンプラニーヨに加えて、ボルドー系のカベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、白では、シャルドネの栽培面積が拡大した。
中でも、主要な役割を果たしたのが、地元協同組合とボデガ・チビテである。
当主のフェルナンド・チビテ・ロペス氏は、スペイン・フランス・ドイツで、葡萄栽培とワイン醸造を学び研鑽を積んだあと、1997年から家族企業の最高責任者として、指導的な役割を果たしている。
小笠原伯爵邸の晩餐会、古典的な洋館の階段を上がると、天井の高いロビーに迎えられた。
アペリティフは、桜色が華やかなロゼ「Colleccion 125 Rosado コレクシオン125ロサード2006」であった。出迎えてくださった、チビテ氏に「ロゼは春を呼ぶワインですね」とご挨拶。みなみな花ほころぶような笑顔で、銘醸ワインの一夜がはじまった。葡萄は「ガルナッチャ、シラー、カベルネ・ソーヴィニョン、メルロ、ピノ・ノワール」と、チビテの葡萄品種総動員の趣だった。すでに5年の熟成をして、見事に調和した味わい。しかし、果実みの新鮮さがはつらつとして、美食へと続く食卓へいざなうワインとして最適なワインとなった。
3種のラス・タパスに先立つワインは「Colleccion 125 Blanco コレクシオン 125 ブランコ 1996」シャルドネの白ワインである。15年の熟成をしたワインは、色調が朱金色の輝きをたたえて、グラスから深みのあるブーケを放つ。熟成した果実味は濃く、野生の蜂蜜や胡桃のニュアンス、かすかに甘みをもたらすマデイラの風味も感じられた。
前菜のオマールえび、たらば蟹、帆立貝とフォアグラなど、濃厚で多彩な素材の味わいに調和する一方で、長い余韻で瞑想的な気分にもなった。
赤ワインは、チビテ家がもっとも誇りにする「Arinzano 2002,2001,2000 アリンサーノ」の3年比較比試飲の機会となった。
「アリンサーノ」は、ナバラ州で、11世紀から「セナーリオ・デ・アリンサーノ」として知られてきた、単一畑の領地である。所有者は代々貴族の一族で、19世紀初頭に、ワイン醸造の聖者として知られる「サン・マルタン・ド・トゥール」に教会が献呈された。
1988年、チビテ家が荒廃していた領地を発見して購入した。直ちに、近代科学技術を駆使して、土壌、気候、ミクロ・クリマなどの分析をした結果、分割された区画ごとに最適な葡萄の樹を選んで再植していった。21世紀が始まりに「ヴィノス・デ・パゴ・アリンサーノ」と命名する開園式には、スペイン王カルロス殿下夫妻が臨席する栄誉にも恵まれた。
「パゴ」は、スペイン最高のアペラシオン・コントロレの格付けで、単一名の「アリンサーノ」だけに与えられる称号でスペインでは、5ヶ所だけが認められている。
ピレネー山麓の領地は、355ヘクタールで、そのうち128ヘクタールで、葡萄栽培が行われている。自然環境を保全するために独自の方針を設定している。
醸造所は、プラド美術館別館など設計した世界的な建築家、ラファエル・モネオに依頼した。環境にやさしい建築材を使って、内部は、ワイン醸造に機能的な設計が行われ、近代アートとしても評価されている。
「アリンサーノ2002」は、テンプラニーヨ52%、メルロ32%、カベルネ・ソーヴィニョン16%の比率。フレンチ・オークで、14ヶ月の樽熟成。
「ワインの色調は、グラスの中央部がほぼ黒味を帯びて濃い。香の始まりは若いけれど、徐々に強みを伴って、沖縄黒糖のニュアンスやブラック・チョコレートの風味に代わる。味わいにも濃厚な甘美さと赤い果実の調和、大きく開花する将来の可能性はまだ計り知れない大きさ、で迫ってくる。すでにおいしいけれど、待つ価値を評価したい」
「アリンサーノ2001」は、テンプラニーヨ42%、メルロ40%、カベルネ・ソーヴィニョン18%、フレンチ・オークで16ヶ月の樽熟成。
「色彩はやや明るいけれど、濃い。ふわりと赤い果実みの風味が快い。すでによい熟成の果実味に繊細なタンニンが調和して、絹のような繊細なテクスチュア(感触)。甘みをもたらすシナモンの風味が複雑な味わい、エレガントな印象で終わる」
「アリンサーノ2000」は、テンプラニーヨ35%、メルロ38%、カベルネ・ソーヴィニョン27%。フレンチ・オークで14ヶ月の樽熟成。
「色彩の中心は黒いけれど、全体にガーネット色。すでによい熟成感をもたらすブーケが複雑味を添える。ややアーシイ(大地にような香)な風味にスペインらしさが感じられる。しなやかななめし皮やマッシュルームの湿った風味、ナッツ風味のチョコレートなど、味と香は、前2ヴィンテージより一層の深みをもたらす」
それぞれ、品種構成が異なるけれども、共通しているのは、凝縮した果実味、タンニンは粒たっているけれど、繊細。若くておいしくのめるけれど、熟成のポテンシャルを10年後に確かめたい、という複雑なボディ。
スペインは、ガウディやピカソなど、世界的にも稀有な天才が生まれる国である。
どちらかといえば、ナバラはまだ、ワイン産地として知名度は高くないけれど、国際的な水準をはるか越えるワイン「アリンサーノ」は、スペインだから生まれた、としか思えない。産地のナバラは「アリンサーノ」の価値によって、より葡萄産地としての存在感が高まるだろう。
ワインジャーナリスト:有坂芙美子
update : 2011.04.4 |category : report